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ニキビの原因はアクネ菌だけじゃない?
皮膚科医に聞く「皮膚の常在菌」(マイクロバイオーム)の影響

ニキビの原因はアクネ菌だけじゃない?皮膚科医に聞く「皮膚の常在菌」(マイクロバイオーム)の影響

ニキビの原因として「アクネ菌」がよく知られていますよね。しかし、アクネ菌だけが悪者なのではなく、ニキビの原因はたくさんあり、いくつもの原因が絡み合って悪化していきます。ニキビができたときの皮膚の状態から、医師の指導にもとづきケアしたときの状態の変化、そしてアクネ菌を含む皮膚の常在菌(マイクロバイオーム)の関係について、皮膚科医の小林美和先生に解説していただきました。

ニキビの原因としてはアクネ菌(C.acnes)が有名ですが、これだけで発症するわけではありません。皮脂の過剰産生、ホルモンバランスの変化、皮膚の角化異常など、さまざまな原因が重なって発症につながります。

ニキビの原因がつくり出す「負のサイクル」

思春期になると性ホルモンの影響によって、皮脂の分泌が多くなります。すると、皮脂を好む菌(アクネ菌やマラセチア菌など)が増え、その影響で皮膚常在微生物叢(マイクロバイオーム)のバランスが崩れます。

増えた菌や菌が分解した皮脂の成分、菌が出す成分などは、皮膚に炎症を起こさせます。炎症が起こると毛穴の角質細胞が増える(角化)ため、毛穴が詰まってしまいます。毛穴の中に皮脂が溜まるので菌が増え、菌が増えると炎症、角化、毛穴詰まり……これを繰り返してどんどん悪化していきます。

面皰(コメド) 皮脂や古い角質による毛穴のつまり

悪い方向に行き始めると、負のサイクルが回り、次々と新しいニキビができ、できたニキビは悪化していきます。それを日々のスキンケアやニキビケアで食い止め、良い方向へ変えていく必要があります。

ニキビをそのままにしたときの進行過程

面皰(コメド) 皮脂や古い角質による毛穴のつまり

ニキビ肌は皮脂が多く、皮脂が出てくる毛穴に面皰(めんぽう)ができています。そして皮膚の表面や毛穴の中に菌が、特に炎症を起こす菌が増えています。

炎症が起きているニキビは、赤く腫れて熱を持ち、痛みやかゆみなどの不快感が出ます。また、炎症がある部位では皮膚のバリアが弱く、外部からの刺激を受けやすくなり、さらに炎症が悪化していきます。

では、医師の指導のもとニキビケアを始めると、ニキビ肌はどう変化するでしょうか。

ニキビケアを始めてからの肌の変化

敏感肌でも使いやすい成分

医師の指導のもとでは、炎症を起こす菌の数を減少させ、毛穴の詰まりが除去される、あるいは毛穴を詰まりにくくするためのニキビケアを行います。ケアが進むとニキビの炎症が落ち着き、赤みや痛みがおさまってきます。一方、ニキビケアの影響で皮膚の環境が変化している可能性があります。

毛穴の詰まりを改善する薬を使っていると、皮膚が乾燥しやすくなります。皮膚が乾燥すると皮膚のバリアが弱くなるので、かゆみや痛み、ヒリヒリ感が出るかもしれません。

また、菌を殺す作用がある薬を使っていると、一部の菌が減って、皮膚の常在菌(マイクロバイオーム)のバランスが崩れやすくなるかもしれません。

ニキビ悩みの肌状態(イメージ) 健康的な肌 バランスの取れたマイクロバイオーム 正常なバリア機能 ニキビ肌 アンバランスなマイクロバイオーム  不安定なバリア機能 ケア中のニキビ肌 アンバランスなマイクロバイオーム健康な皮膚常在菌の減少 乾燥 落屑などの不快感

ニキビケア中に変化した皮膚は、ニキビができにくくなり、ケアが終わると徐々に回復していくと考えられています。ニキビケア中はもちろん、ニキビが治ってケアが終わってからも、「なるべく早く、健康的でニキビができにくい理想的な皮膚へと回復させること」を目指してスキンケアをしていきましょう。

マイクロバイオームとアクネ菌の関係

人間の皮膚の表面には、数多くの種類の微生物(皮膚常在菌;マイクロバイオーム)がバランスを取り合って生息しています。研究によると、健康な肌ではマイクロバイオームのバランスが良好で、皮膚のバリア機能が保たれていると考えられています。

近年、腸内細菌と同様に、皮膚の常在菌(マイクロバイオーム)についても注目が集まっており、積極的に研究が進められています。ニキビだけでなく、アトピー性皮膚炎や他の皮膚疾患でも研究が進んでいます。

健康的な皮膚ではマイクロバイオームの多様性が保たれている(いろんな種類の菌が適切な割合でいる)一方で、皮膚トラブルがあるときにはマイクロバイオームのバランスが崩れて偏りがあることが分かってきました。

ニキビでは、皮脂が増えることで皮脂を栄養にする菌(アクネ菌やマラセチア菌など)が増えます。その影響で他の菌も増減し、バランスが崩れます。また、増えたアクネ菌の一部が炎症を起こしてニキビを悪化させることも分かっています。

皮膚のマイクロバイオームについては、まだまだ分かっていないことがたくさんあるので、理想的なマイクロバイオームを保つためにどうすれば良いのか、明確な答えは出ていません。

しかし皮膚のマイクロバイオームのバランスを立て直し、本来あるべき状態へと回復させていくことは、理想的な皮膚を目指す際のポイントの一つにあげられます。
「皮膚のマイクロバイオームを整えるスキンケア」は、ニキビ対策のスキンケアにおいても大切なコンセプトになるだろうと、注目しています。

こばやし皮膚科クリニック 副院長
小林美和先生

こばやし皮膚科クリニック副院長。香川医科大学を卒業後、産業医科大学皮膚科に入局。さまざまな皮膚疾患の予防から治療までトータルな診療を行う。ニキビ、シミ・シワ、肌が敏感なときのメイク法など、女性に多い悩みにも親身に寄り添う診療とアドバイスで患者からの信頼も篤い。 WEBメディア、雑誌などでも正しいスキンケア方法を発信している。

小林美和先生
小林美和先生

こばやし皮膚科クリニック 副院長
小林美和先生

こばやし皮膚科クリニック副院長。香川医科大学を卒業後、産業医科大学皮膚科に入局。さまざまな皮膚疾患の予防から治療までトータルな診療を行う。ニキビ、シミ・シワ、肌が敏感なときのメイク法など、女性に多い悩みにも親身に寄り添う診療とアドバイスで患者からの信頼も篤い。 WEBメディア、雑誌などでも正しいスキンケア方法を発信している。

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