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美肌菌が肌状態を左右する!?敏感肌への影響と菌活スキンケアの効果

美肌菌が肌状態を左右する!?敏感肌への影響と菌活スキンケアの効果

「敏感肌」は、皮膚のバリア機能の低下で起こるといわれ、その原因として紫外線・花粉・乾燥などが知られています。皮膚のバリア機能をすこやかに保つためには、美肌菌をはじめとする皮膚のマイクロバイオーム(常在菌叢)のバランスが重要であることが最近の研究でわかってきました。

美肌菌(善玉菌)とは

美肌菌(善玉菌)の働き うるおいを生み出す 悪玉菌の繁殖を抑える

マイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)の一つで、肌にとって良い働きをしてくれる菌のこと。肌のpHを弱酸性に保ったり、うるおい成分を産生したり、悪玉菌の繁殖を抑える成分を産生したりして、肌のバリア機能を保護してくれています。

皮膚のマイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)とは

人間の体は、肉眼では見えませんが、何兆もの微生物の住みかになっています。細菌だけではなく、原虫・ウィルス・真菌などの微生物で形成されたコミュニティが「マイクロバイオーム」です。

美肌菌(善玉菌)とその仲間たちの特徴

美肌菌(善玉菌) 肌に良い働きをする 悪玉菌 増えすぎると肌トラブルを起こす 日和見菌 通常は無害だが、悪玉菌が増えると悪い働きをする

「マイクロバイオーム」には多種多様なメンバーがいます。立派な市民(善玉菌)もいれば、トラブルメーカー(悪玉菌)もいて、まるで人間社会のようです。普段は善良な市民を装っていますが、チャンスがあれば事件の原因を引き起こす市民(日和見菌)も存在します。

悪玉菌や日和見菌を完全になくすことはできません。そのため、マイクロバイオームのバランス(肌バランス)を整えることは、美肌を保つ上でとても重要です。

肌の善玉菌(美肌菌)

肌に良い働きをして、肌のバリア機能を保護する菌(美肌菌)です。
美肌菌である表皮ブドウ球菌は、皮脂や汗を分解して、グリセリンと脂肪酸に分解します。
● グリセリン:保湿成分として働く
● 脂肪酸:肌を弱酸性に保ち、皮脂膜を形成してウィルスや細菌が入り込むことを防ぐ

肌の悪玉菌

増えすぎると肌にとって、有害なトラブルを引き起こす菌のこと。数が少ない限り、トラブルにつながることはめったにありませんが、異常繁殖には要注意です。

悪玉菌の一つである黄色ブドウ球菌は、傷が膿む原因となる菌です。肌の乾燥を引き起こし、アトピーとの関連性も指摘されています。

肌の日和見菌(ひよりみ菌)

健康な状態だと美肌菌的な働きをし、バランスが崩れ悪玉菌が増えると、悪玉菌的な働きをする菌のこと。

日和見菌の一つであるアクネ菌は、普段は肌の保湿機能を高める役割をもっています。しかし皮脂が増えると、アクネ菌の持つリパーゼという酵素が皮脂を分解。遊離脂肪酸となって皮膚を刺激し、毛穴をふさぎます。これにより、好脂性・嫌気性のアクネ菌が増加してニキビとなってしまいます。

美肌菌の役割「肌のバリア機能」の保護とは

角質層 バリア機能が正常な肌 水分 バリア機能が低下した肌

肌のバリア機能には「外的刺激から肌を守る働き」と「肌内部の水分を守る働き」の二つの意味があります。

外的刺激から肌を守る

美肌菌が皮脂を分解して作り出した脂肪酸の働きによって、皮膚の表面は弱酸性に保たれます。それにより雑菌の増殖を抑え、皮膚を健康に保ちます。皮膚に炎症を起こす菌や病原菌は、酸性の環境を嫌うので、肌が弱酸性に保たれていれば人体に入り込むことができません。

肌の水分を守る

すこやかな肌の角質層は、約15~20%の水分を含んでいます。肌がみずから生み出すセラミドやNMF(天然保湿因子)などの保湿物質が、水分を蓄え、うるおいを保ってくれます。

運動不足やホルモンバランスの崩れによって皮脂や汗が分泌されないと、美肌菌が弱って肌が乾燥してしまいます。

さらに、皮膚がアルカリ性に傾くことにより、黄色ブドウ球菌などの悪玉菌が繁殖しやすくなります。すると皮脂膜が壊れ、角質層の水分が蒸発して、さらなる乾燥やかゆみ、炎症の原因となってしまいます。

敏感肌は菌のバランス(肌バランス)が乱れていた!?

皮膚常在菌は、それぞれが種類ごとに縄張りを持って集まって生息しています。すこやかな肌を保つためには、それぞれがバランスを保って生息していることが大切と考えられています。

美肌菌が減ってしまうと、弱酸性であるはずの肌がアルカリ性へと傾き、悪玉菌が異常繁殖しやすい環境になってしまいます。逆に美肌菌がきちんと育っていれば、トラブルのないすこやかな肌を保つことができます。

研究結果からわかった敏感肌の傾向

近年の研究で、敏感肌の方はマイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)の多様性が低く、美肌菌である表皮ブドウ球菌の割合が低いことがわかりました。さらに美肌菌である表皮ブドウ球菌の割合が高い肌ほど肌の水分量が高く、赤み(炎症)は低いということもわかってきました。

マイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)を健康に保つことで、皮膚の美しさだけでなく炎症などのトラブル予防にもなるということです。

菌活スキンケア7つのポイント

美肌菌をしっかり成長させて肌バランスを整えるために、次の点に注意してケアしましょう。

1.保湿

皮膚が乾燥すると、悪玉菌である黄色ブドウ球菌が活発化。炎症を引き起こしたり、さらなる乾燥を引き起こしたりします。美肌菌が生息できる、うるおいのある肌環境を整えてあげることが大切です。冷暖房による乾燥にも注意して、適宜加湿器などを使用しましょう。

また皮膚を健康に保つためには、美肌菌の好む栄養源となる成分(プレバイオティクス)をスキンケアで補充してあげることもおすすめです。

2.紫外線予防

皮膚常在菌にとっても紫外線は有害です。自分の好みに合った日焼け止めを、こすらないように塗りましょう。帽子やUVカット効果のある衣服、日傘などの併用も効果的です。

3.洗いすぎない

洗いすぎ・こすりすぎは皮膚にとって重要な皮膚常在菌を減らしてしまうだけでなく、乾燥の原因となってしまいます。さっと入浴するだけで皮膚表面の常在菌の90%はいなくなるといわれています。

4.栄養

サプリメントだけに頼るのではなく、いろいろな食材を、彩りよくバランスよくとりましょう。とくに食物繊維、発酵食品を意識して取ると、腸内環境が整いやすくなります。

プレバイオティクスやプロバイオティクスを取り入れて、マイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)を健康に保ちましょう。

プレバイオティクス プロバイオティクス
善玉菌の増殖に役立つ栄養を届ける 生きた善玉菌
ブロッコリー、キャベツ、アスパラガス、バナナ、たまねぎ、キノコ類、豆類、海藻類など ヨーグルト、納豆、キムチ、ぬか漬け、味噌など、生きた細菌群を含む発酵食品

5.睡眠

睡眠不足になると、肌の新陳代謝がくずれ、血行不良による肌荒れ、ニキビの悪化などを引き起こします。熟睡するための環境づくりを心がけましょう。

6.汗をかく

汗には二つの大きな働きがあります。
● 汗は美肌菌である表皮ブドウ球菌のエサになる
● 汗に含まれる抗菌ペプチドが悪玉菌の増殖を防いでくれる

ぬるめのお風呂に浸かってしっかり汗をかいたり、定期的なエクササイズを行ったりすることで、マイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)もすこやかに保つことができます。

7.肌に触れるものを清潔に保つ

メイクのスポンジやブラシは、定期的にお手入れをしないと雑菌の温床になってしまいます。また皮膚に長時間、直接触れる枕カバーはこまめに洗濯しましょう。

ニキビやシミが気になるからといって、手でこすったり触ったりするのも、肌に悪影響を与えます。顔の皮膚を手で触りすぎないこと・こすりすぎないことは、菌活スキンケアにおいてとても重要です。

美肌菌をはぐくむ「菌活スキンケア」を取り入れて肌バランスを整えることは、美肌への近道といえます。菌活スキンケアのポイントを押さえて、健康なマイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)を育てましょう!

参考文献
※1)細菌のはたらきパーフェクトガイド(キャサリン・ウィットロック、ニコラ・テンプル著 日経ナショナルジオグラフィック社)
※2)皮膚常在菌ビューティ(川上愛子著 株式会社ワニブックス)
※3)バリアケアに着目した敏感肌用化粧品の開発 菊田雅之 日本香粧品学会誌 Vol. 45, No. 2, pp. 112–115 (2021)

ふるはた皮ふ科クリニック
古畑 由美子先生

日本皮膚科学会専門医・日本アレルギー学会専門医・日本抗加齢学会専門医・日本医師会認定産業医・労働衛生コンサルタント・サプリメントアドバイザー(NR)
古畑病院にて約15年勤務後、ふるはた皮ふ科クリニックを開設。
「すべての患者さまに、健康で美しい肌を」を医療理念とし、一般保険診療を中心に、美容皮膚科(自由診療)まで幅広い診療を行っている。
気軽に相談できる皮膚のパートナーとして役立ちたいと考えています。

古畑由美子先生
古畑由美子先生

ふるはた皮ふ科クリニック
古畑 由美子先生

日本皮膚科学会専門医・日本アレルギー学会専門医・日本抗加齢学会専門医・日本医師会認定産業医・労働衛生コンサルタント・サプリメントアドバイザー(NR)
古畑病院にて約15年勤務後、ふるはた皮ふ科クリニックを開設。
「すべての患者さまに、健康で美しい肌を」を医療理念とし、一般保険診療を中心に、美容皮膚科(自由診療)まで幅広い診療を行っている。
気軽に相談できる皮膚のパートナーとして役立ちたいと考えています。

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